国際送金に最適なステーブルコインはどれ？種類・特徴・選び方を徹底解説
国際送金は、ビジネスや個人間のやり取りで不可欠ですが、送金手数料や為替レートの変動に頭を悩ませることも少なくありません。特に頻繁に送金や受け取りを行う方にとって、これらのコストやリスクは無視できない問題です。
ブロックチェーン技術を活用した国際送金は、こうした課題を解決する可能性を秘めていますが、その中でも「ステーブルコイン」は、為替変動リスクを抑えたい場合に特に注目されています。
本記事では、国際送金にステーブルコインを利用するメリット・デメリットとともに、主要なステーブルコインの種類や、自分に最適なステーブルコインを選ぶためのポイントをわかりやすく解説します。「ステーブルコイン」という言葉を初めて聞く方にもご理解いただけるよう、専門用語は丁寧に説明いたします。
国際送金における「為替変動リスク」とは？
国際送金では、異なる国の通貨を交換（両替）する必要があります。この両替を行う際の為替レートは常に変動しており、送金手続きをしている間にレートが不利になる可能性があります。例えば、日本円を米ドルに両替して送金する場合、手続き中に円安が進むと、同じ日本円でも送金額が減ってしまう、というリスクです。これを「為替変動リスク」と呼びます。
銀行や従来の送金サービスでは、この為替変動リスクを考慮した為替手数料が上乗せされたり、送金完了までの間にレートが大きく動いてしまったりすることがあります。
ステーブルコインが為替変動リスクを軽減できる理由
ステーブルコイン（Stablecoin）とは、その名の通り「安定した（Stable）」価格を目指して設計された暗号資産です。米ドルや日本円といった法定通貨、金などのコモディティ、あるいは他の暗号資産などの特定の資産に、その価格をペッグ（固定または連動）させることで、価値の安定を図っています。
例えば、米ドルにペッグされたステーブルコイン（USD建てステーブルコイン）であれば、その価格は常に1米ドル付近になるように調整されます。これにより、国際送金で米ドル建てのステーブルコインを利用すれば、送金中に暗号資産自体の価格が大きく変動するリスクを抑えることができるのです。
これは、価格変動が大きいビットコインやイーサリアムといった他の暗号資産にはない、ステーブルコインの大きな特長であり、国際送金において為替変動リスクを避けたい場合に非常に有効な選択肢となります。
国際送金で利用される主要なステーブルコインの種類
現在、様々な種類のステーブルコインが存在しますが、国際送金でよく利用される代表的なものをご紹介します。
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テザー（Tether / USDT）
- 最も古く、最も流通量の多いステーブルコインの一つで、米ドルにペッグされています。
- 主に米ドル、ユーロ、オフショア人民元などにペッグされた複数のステーブルコインを発行しています。国際送金でよく使われるのはUSDテザー（USDT）です。
- 発行元はテザー社（Tether Limited）。その裏付け資産（法定通貨、現金同等物、その他の投資など）については、透明性や信頼性について議論されることもありますが、依然として国際的な取引で広く利用されています。
- 様々なブロックチェーンネットワーク（イーサリアム、TRON、Solanaなど）に対応しているため、送金コストや速度に合わせてネットワークを選べる場合があります。
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USDコイン（USD Coin / USDC）
- 米ドルに1対1でペッグされたステーブルコインです。
- 発行元はCircle社とCoinbase社が設立したCentreコンソーシアム。裏付け資産は米ドルや短期米国債などで構成され、定期的に監査を受けていることを公表しており、比較的透明性が高いとされています。
- 多くの暗号資産取引所やDeFi（分散型金融）サービスで利用されており、信頼性の高いステーブルコインとして評価されています。
- 主にイーサリアムネットワーク（ERC-20）で流通していますが、他のネットワークにも対応しています。
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ダイ（Dai / DAI）
- 米ドルにソフトペッグ（完全に固定ではないが、価格を追随）を目指す、分散型のステーブルコインです。
- MakerDAOという分散型の自律組織（DAO）によって管理されています。他の暗号資産（イーサリアムなど）を担保としてスマートコントラクト（自動実行される契約）で発行されます。
- 中央集権的な発行体が存在しないため、発行体破綻のリスクは低いとされますが、担保資産の価格変動やスマートコントラクトのリスクが存在します。
- DeFi分野で広く利用されていますが、国際送金用途でも利用可能です。
国際送金向けのステーブルコインを選ぶ際のポイント
上記以外にもステーブルコインは存在しますが、国際送金で利用する際には以下の点を考慮して選ぶことが重要です。
- 信頼性と透明性:
- ステーブルコインの価値が安定しているかどうかは、その裏付け資産が適切に管理されているかどうかにかかっています。発行体が誰か、どのような資産を裏付けとしているか、定期的な監査を受けているか、その報告書は公開されているかなどを確認しましょう。信頼性が低い場合、価格がペッグから大きく乖離したり、最悪の場合、価値がなくなったりするリスクがあります。
- 対応ネットワーク:
- ステーブルコインは様々なブロックチェーン上で発行・流通しています。利用したいサービス（取引所やウォレット）が、そのステーブルコインのどのネットワークに対応しているかを確認してください。誤ったネットワークに送金すると、資産を失う可能性があります。また、ネットワークによって送金速度や手数料（ガス代）が異なるため、目的に合ったネットワークを選択できるかも重要です。
- 利用できる場所（取引所・サービス）:
- 送金したい相手や利用したいサービスが、対象のステーブルコインを扱っているかを確認する必要があります。主要なステーブルコインほど、多くの取引所やウォレット、サービスで取り扱いがあります。
- 流動性:
- 受け取ったステーブルコインを日本円などに換金したい場合、スムーズに換金できるか（流動性が高いか）も重要です。取引量が多いステーブルコインほど、希望する価格で売買しやすくなります。
- 規制への対応:
- 各国の規制によって、利用できるステーブルコインやサービスが制限されることがあります。特に利用する取引所やサービスが、送金に関わる各国の規制（資金決済法など）に準拠しているかを確認することは、トラブル回避のために重要です。
ステーブルコインを使った国際送金のメリットとデメリット
メリット
- 為替変動リスクの軽減: 最も大きなメリットです。法定通貨にペッグされているため、送金中の価格変動リスクを抑えられます。
- 手数料の削減: 銀行の国際送金と比較して、ブロックチェーンネットワークを通じた送金手数料（ガス代など）や、ステーブルコインの取引手数料が安く済む場合があります。（ただし、ネットワークやサービスによって異なります）
- 送金速度の向上: 銀行の営業時間に関係なく、24時間365日送金可能で、ネットワークによっては数分から数十分で相手に届けることができます。（ネットワークの混雑状況によります）
- グローバルな利用: インターネット環境があれば、国境を越えて簡単に送金・受け取りが可能です。
デメリット
- 発行体リスク: ステーブルコインの発行体が破綻した場合、裏付け資産が適切に管理されていなかったり、価値が保証されなくなったりするリスクがあります。前述の「信頼性と透明性」の確認が重要です。
- 技術的リスク: ウォレットの秘密鍵を紛失したり、誤ったアドレスに送金したりすると、資産を取り戻せなくなるリスクがあります。送金先の確認は銀行送金以上に慎重に行う必要があります。
- 規制リスク: ステーブルコインに関する規制は発展途上であり、今後変更される可能性があります。利用しているステーブルコインやサービスが規制対象となったり、利用できなくなったりするリスクがあります。
- 理解のハードル: ブロックチェーンやウォレット、取引所といった、ある程度の技術的な概念やツールを理解する必要があります。
ステーブルコインを使った国際送金の簡単な流れ
一般的なステーブルコインを使った国際送金の流れは以下のようになります。
- 暗号資産取引所のアカウント開設・本人確認: 国内または海外の暗号資産取引所で口座を開設し、本人確認（KYC）を行います。
- 日本円を入金: 取引所に日本円を入金します。
- ステーブルコインを購入: 入金した日本円を使って、希望するステーブルコイン（例: USDC）を購入します。
- ウォレットまたは相手の取引所へ送金: 購入したステーブルコインを、自分の管理するウォレット、または送金相手のウォレットや取引所アカウントへ送金します。この際、送金先のアドレスとネットワークを正確に確認することが最も重要です。
- 相手側の手続き: 送金を受け取った相手は、自分のウォレットで保管するか、取引所で現地通貨などに換金します。
まとめ：ステーブルコインを賢く活用するために
国際送金において、ステーブルコインは為替変動リスクを抑え、手数料や速度の面でメリットを享受できる強力なツールとなりえます。しかし、発行体の信頼性、対応ネットワーク、そしてご自身でのウォレット管理など、理解し注意すべき点も存在します。
どのステーブルコインを選ぶかは、その信頼性、利用したいサービスとの互換性、そしてご自身のリスク許容度によって異なります。本記事でご紹介した主要なステーブルコインの種類や選び方のポイントを参考に、ご自身の国際送金の目的に合ったステーブルコインを慎重に選んでみてください。
ブロックチェーン送金Labでは、これからもブロックチェーン技術を使った国際送金に関する様々な情報を提供してまいります。