【実用ガイド】為替変動が大きい時期のブロックチェーン国際送金:最適なタイミングと方法
はじめに:国際送金と為替変動の悩み
海外との間で送金や受金を行う際、多くの方が直面するのが「為替変動」による影響です。特にフリーランスとして海外から報酬を受け取る場合や、海外へサービス料などを送金する場合、送金や着金のタイミングによって最終的に手にする、あるいは支払う日本円の金額が大きく変わってしまうことがあります。これは、国際送金にかかる手数料だけでなく、為替レートの変動によって生じる隠れたコストとも言えるでしょう。
このような為替変動のリスクに対し、ブロックチェーン技術を使った国際送金はどのような選択肢を提供してくれるのでしょうか?本記事では、為替変動が大きい時期に焦点を当て、ブロックチェーン国際送金を活用する際の考え方や具体的な戦略について解説します。
国際送金における為替変動リスクとは?
まず、国際送金で為替変動がなぜ問題になるのかを簡単に整理しましょう。
国際送金では、通常、送金元の通貨から送金先の通貨へと両替が行われます。この両替に適用されるのが「為替レート」です。為替レートは常に変動しており、送金手続きを行った時点と、相手が資金を受け取る時点(あるいは両替が行われる時点)でレートが変わる可能性があります。
例えば、1ドル=150円の時に1000ドルを受け取る手続きをしても、実際に円として手にするまでに円高が進み1ドル=145円になった場合、受け取れる日本円は15万円から14万5千円に減ってしまいます。逆に、海外へ送金する際に円安が進んでいれば、同じ外貨金額を送るためにより多くの日本円が必要になります。
この変動リスクは、為替レートが大きく、かつ予測不能に動く時期に特に顕著になります。このため、多くの国際送金利用者は、送金・受金の最適なタイミングについて悩むことになります。
ブロックチェーン国際送金が為替変動にどう対応するか
ブロックチェーン国際送金は、従来の銀行送金とは異なる仕組みで価値を移転します。主に暗号資産(仮想通貨)を利用して送金するため、為替変動リスクに対する考え方も変わってきます。
ブロックチェーン国際送金で利用される主な価値移転手段は以下の2種類に分けられます。
- 価格が変動する暗号資産(例:ビットコイン、イーサリアムなど)
- 価格が特定の法定通貨などに連動するステーブルコイン(例:USDT, USDC, DAIなど)
それぞれの場合で、為替変動リスクへの対応が異なります。
価格が変動する暗号資産を使う場合
ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産は、その市場価格が常に変動しています。国際送金にこれらを利用する場合、送金のために円をビットコインに換え、受け取った側がビットコインを現地通貨(または円)に換える、というプロセスになります。
- メリット: 送金速度や手数料の安さといったブロックチェーン送金本来のメリットを享受できます。また、価格上昇を期待して一時的に暗号資産として保持する、という選択肢も理論上は存在します。
- デメリット: 暗号資産自体の価格が大きく変動するため、為替変動リスクに加えて「暗号資産の価格変動リスク」が加わります。例えば、送金手続きをした直後に暗号資産の価格が急落すると、受け取る側の価値が大きく目減りする可能性があります。逆に価格が急騰することもありますが、これは投機的な側面が強く、安定した国際送金には不向きと言えます。
ステーブルコインを使う場合
ステーブルコインは、その価格を米ドルや日本円といった特定の法定通貨、あるいは金などの資産に連動(ペッグ)させることを目指して設計された暗号資産です。例えば、1USDCは約1米ドルに、1JPYCは約1日本円に連動するように作られています。
- メリット: 価格が安定しているため、暗号資産自体の価格変動リスクをほぼ回避できます。特定の法定通貨にペッグされたステーブルコインを使えば、その法定通貨ベースでの価値を保ったままブロックチェーン上で送金できるため、為替変動リスクを抑制できます。(例: 米ドル建てのUSDCで送金すれば、送金・受金中の米ドル価値はほぼ変わりません。)
- デメリット: 利用したい通貨建てのステーブルコインが存在しない場合や、対応している送金サービス・取引所が限られる場合があります。また、ステーブルコインの発行体の信用リスクが存在する可能性もゼロではありません(主要なステーブルコインは監査などにより信頼性を高めています)。
為替変動が大きい時期の具体的な活用戦略
為替変動が大きい時期にブロックチェーン国際送金を利用する際に、読者ペルソナであるフリーランス翻訳家の方が参考にできる具体的な戦略をいくつかご紹介します。
戦略1:変動リスクを避けたいなら「ステーブルコイン」を活用する
最もシンプルでリスクを抑えられる方法は、ステーブルコインを利用することです。
- 送金の場合: 日本円をステーブルコイン(例: USDTやUSDCなど米ドルペッグのもの、あるいはJPYCなど円ペッグのもの)に交換し、そのステーブルコインを送金します。受け取った側は、そのステーブルコインを自身の使いたい通貨に交換します。送金中にステーブルコイン自体の価格は安定しているため、為替変動の影響は「円をステーブルコインに換える時」と「ステーブルコインを受け取り側が現地通貨に換える時」の2点に限定されます。特に米ドルペッグのステーブルコインは流動性が高く、多くのサービスで利用可能です。
- 受金の場合: 海外からの報酬を、日本円ではなくステーブルコイン(例: 米ドル建てのUSDCなど)で受け取るように依頼します。受け取ったステーブルコインは、ご自身のウォレットや取引所で必要な時に日本円に交換します。この方法であれば、日本円に交換するタイミングを自分で選べるため、円安の時に円に換える、といった戦略的な対応が可能になります。
ステーブルコインは、価格の安定性を重視する利用者にとって、為替変動リスクを管理するための有効な手段となります。
戦略2:暗号資産(ビットコインなど)を使う場合の注意点
価格が変動する暗号資産を使う場合、為替変動リスクに加えて暗号資産自体の価格変動リスクが伴います。為替変動が大きい時期は、多くの場合、暗号資産市場も不安定になりがちです。
この場合、リスクを最小限に抑えるためには「時間」を意識することが重要です。
- 送金・受金のタイミングを最小限にする: 円から暗号資産への交換、暗号資産での送金、暗号資産から受取通貨への交換という一連のプロセスを、可能な限り短時間で行うように心がけましょう。暗号資産として保持する時間を短くすることで、価格変動の影響を受ける可能性を減らせます。
- 少額で試してみる: いきなり大きな金額を送金するのではなく、少額で何度か試してみて、実際の価格変動がどの程度影響するのかを確認するのも有効です。
- 現在の為替レートと暗号資産価格を常にチェック: 送金・受金を行う直前の為替レート(円/法定通貨)と、利用する暗号資産の市場価格(円/暗号資産、暗号資産/法定通貨)を確認し、不利なタイミングではないか判断することが重要です。
円高・円安状況別の考慮事項
為替が円高に進んでいる時期と円安に進んでいる時期では、国際送金における考慮事項が異なります。
円高の時(海外からの受取が多い場合)
円高は、外貨建ての報酬を日本円に換算した際に、受け取れる円貨額が目減りすることを意味します。
- 銀行送金の場合: 円高が進行している最中に受け取り手続きをすると、不利なレートで円に両替されてしまう可能性があります。
- ブロックチェーン送金(ステーブルコイン)の場合: 海外から米ドル建てのステーブルコイン(USDCなど)で受け取る場合、受け取ったステーブルコインの米ドルとしての価値は変わりません。しかし、それを日本円に換える際に、円高が進んでいれば、やはり受け取れる日本円は少なくなります。この場合、すぐに円に換えずにステーブルコインのまま保持し、円安が進むのを待ってから円に換える、という選択肢を検討できます(ただし、ステーブルコインの発行体の信用リスクや、将来の為替レートの予測は難しい点を理解しておく必要があります)。
- ブロックチェーン送金(暗号資産)の場合: 暗号資産自体の価格変動リスクが加わるため、為替変動との組み合わせでさらに複雑になります。基本的には、受け取ったらすぐに円に換えるなど、保有時間を短くすることが推奨されます。
円安の時(海外への送金が多い場合)
円安は、日本円を外貨に換算した際に、より多くの日本円が必要になることを意味します。
- 銀行送金の場合: 円安が進行している最中に海外へ送金すると、不利なレートで外貨に両替され、送金コストが高くなります。
- ブロックチェーン送金(ステーブルコイン)の場合: 円建てのステーブルコイン(JPYCなど)から海外の法定通貨建てのステーブルコイン(USDCなど)に交換して送金したり、あるいは直接USDCを購入して送金するなどの方法があります。円安が進んでいる場合、円をステーブルコインに交換する際のコスト(必要な円の量)が増えます。送金自体はブロックチェーン上で行われるため迅速ですが、やはり「円を外貨建て価値に換えるタイミング」が重要になります。円安が一服するのを待つなどの判断が必要になる場合があります。
- ブロックチェーン送金(暗号資産)の場合: 円安と暗号資産価格の変動が組み合わさります。円で暗号資産を購入し、それを海外に送る場合、円安で暗号資産購入コストが高くなっている上に、送金中に暗号資産価格が変動するリスクもあります。この場合も、プロセス全体を迅速に行うことが重要です。
リスクを最小限に抑えるためのポイント
為替変動が大きい時期にブロックチェーン国際送金を安全かつ効果的に利用するためには、以下のポイントに注意しましょう。
- 情報収集を怠らない: 現在の為替レート、利用したい暗号資産やステーブルコインの価格、そして市場のニュースをこまめにチェックすることが重要です。
- 信頼できるサービスを選ぶ: ステーブルコインの取り扱いや、日本円との交換がスムーズな、信頼できるブロックチェーン国際送金サービスや暗号資産取引所を選びましょう。サービスの利用規約や手数料体系もしっかり確認してください。
- 送金目的と期間に合わせて手段を選ぶ: 少額を頻繁に送るのか、まとまった金額を一度に送るのか、資金を一時的に保持したいのかなど、目的に応じてステーブルコインを使うか、あるいは価格変動のある暗号資産を使うかを慎重に判断してください。長期保有の可能性があるなら、価格変動リスクの少ないステーブルコインが適しているかもしれません。
- 税金への影響を理解する: 暗号資産の売買や、他の暗号資産への交換(ステーブルコインへの交換を含む)は税金の対象となる可能性があります。為替変動や暗号資産の価格変動によって生じた損益は、適切に計算し申告する必要があります。税務に関する情報を確認するか、専門家に相談することをお勧めします。
まとめ:賢くブロックチェーン国際送金を活用するために
為替変動は国際送金に付き物ですが、ブロックチェーン技術、特にステーブルコインを理解し活用することで、そのリスクを管理し、より有利な条件で送金・受金を行える可能性が広がります。
為替変動が大きい時期は、ステーブルコインを活用して価値の安定性を保つことが一つの有効な戦略となります。また、価格変動のある暗号資産を使う場合でも、取引のタイミングを迅速に行うなどの工夫でリスクを軽減できます。
重要なのは、ご自身の送金・受金のニーズ、現在の為替・暗号資産市場の状況、そして各ブロックチェーン国際送金サービスの特徴を理解し、最適な方法を選択することです。情報収集をしっかり行い、信頼できるサービスを選んで、為替変動の波を乗り越えましょう。
もし、どのステーブルコインを選べば良いか、あるいはどのサービスが自分の状況に適しているかなど、さらに詳しい情報が必要でしたら、「ブロックチェーン送金Lab」の他の記事もぜひ参考にしてください。