国際送金で受け取った暗号資産、どうやって日本円にする?換金方法と手数料、注意点を解説
国際的なビジネスやフリーランスとして活動されている方にとって、海外からの報酬や送金を受け取る機会は少なくないでしょう。近年、従来の銀行送金に代わる選択肢として、ブロックチェーン技術を活用した国際送金が注目されています。手数料の安さや送金スピードの速さに魅力を感じ、ブロックチェーン送金を利用して暗号資産で報酬を受け取った方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、受け取った暗号資産を、実際に日々の生活で使える「日本円」にするには、どのようにすれば良いのでしょうか?銀行送金であれば、そのまま円建てで受け取れたり、外貨のまま保有したりすることが可能ですが、暗号資産の場合は少し手順が必要です。
この記事では、ブロックチェーン国際送金で受け取った暗号資産を日本円に換金するための具体的な方法、その際にかかる手数料、そして知っておくべき注意点について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
ブロックチェーン送金で受け取る資産の多くは暗号資産
まず、ブロックチェーン技術を利用した国際送金で受け取る資産の多くは、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)といった「暗号資産」です。送金サービスによっては、特定の暗号資産(リップル/XRPなど)が送金経路として利用され、最終的に受け取り側は法定通貨(日本円など)で受け取れる場合もあります。しかし、多くの場合は、送金側が送金したい暗号資産(または法定通貨を変換した暗号資産)を送金し、受け取り側はそのままその暗号資産を受け取る形となります。
例えば、海外のクライアントからビットコインで報酬を受け取った場合、お手元のウォレットにはビットコインが入金されることになります。これを日本円として使うためには、「暗号資産を売却して日本円にする」という換金作業が必要になるのです。
受け取った暗号資産を日本円に換金する基本的な流れ
暗号資産を日本円に換金するための最も一般的で推奨される方法は、「暗号資産取引所」や「販売所」を利用することです。ここでは、その基本的な流れをご説明します。
- 暗号資産取引所・販売所の口座を開設する
- まずは、日本国内で金融庁の登録を受けている信頼できる暗号資産取引所または販売所の口座を開設します。本人確認(KYC)の手続きが必要になります。複数の取引所がありますが、ご自身の利用目的に合った取引所を選びましょう。
- 受け取った暗号資産を取引所の口座に入庫する
- 海外から直接取引所の口座に送金してもらうか、ご自身が管理するウォレットで一度受け取ってから取引所の口座に送金します。取引所の入庫用アドレス(各暗号資産ごとに異なります)宛に送金手続きを行います。アドレスを間違えると資産を失うリスクがあるため、慎重に進めてください。
- 取引所・販売所で暗号資産を売却する
- 取引所の口座に入庫が完了したら、保有する暗号資産を日本円で売却します。
- 販売所: 取引所が提示する価格で、簡単に売買できます。価格設定に「スプレッド」(買値と売値の差)が含まれていることが多く、これが実質的な手数料となります。
- 取引所: ユーザー同士が板(取引板)を通じて直接売買します。希望価格を指定して注文できる「指値注文」や、現在の市場価格で即時売買する「成行注文」があります。一般的に販売所よりもスプレッドが狭く、手数料も低い傾向がありますが、取引が成立するまで時間がかかる場合もあります。
- ご自身の利用スタイルや手数料、使いやすさを考慮して、販売所または取引所のどちらを利用するか選択します。
- 取引所の口座に入庫が完了したら、保有する暗号資産を日本円で売却します。
- 売却で得た日本円を銀行口座に出金する
- 暗号資産の売却が完了すると、取引所の口座に日本円残高が計上されます。この日本円を、事前に登録しておいたご自身の銀行口座に出金申請します。取引所によって出金手数料や最低出金額、処理にかかる時間が異なります。
この4つのステップを経ることで、受け取った暗号資産を日本円として手元に引き出すことができます。
換金にかかる手数料の種類と注意点
暗号資産の換金には、いくつかの種類の手数料が発生する可能性があります。これらを理解しておくことで、実質的に手元に残る日本円の額を把握できます。
- 送金手数料(ネットワーク手数料/ガス代): 暗号資産をウォレットから取引所に送る際や、取引所から別のウォレットに送る際に発生する手数料です。これはブロックチェーンのネットワーク維持のために支払われるもので、利用状況によって変動します。取引所によっては、入庫手数料として別途徴収される場合もあります。
- 取引手数料: 取引所や販売所で暗号資産を売買する際に発生する手数料です。取引所形式か販売所形式か、また利用する取引所や取引量によって料率が異なります。
- スプレッド: 販売所形式での売買や、取引所形式でも成行注文などで発生する実質的なコストです。買値と売値の差額のことで、この差が大きいほど換金時のコストが高くなります。市場の状況(流動性)によって変動します。
- 出金手数料: 取引所の口座からご自身の銀行口座に日本円を出金する際に発生する手数料です。取引所によって固定額の場合や、出金額に応じた料率の場合があります。
これらの手数料を合計したものが、暗号資産を日本円に換金する際の実質的なコストとなります。銀行送金の手数料と比較検討する際は、送金時の手数料だけでなく、受け取った暗号資産を日本円にするまでの全てのコストを含めて考えることが重要です。
換金時に特に注意すべき点
暗号資産を日本円に換金する際には、いくつかの重要な注意点があります。
- 為替変動リスク: ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産は、価格変動が大きいという特性があります。受け取った時点の価値と、日本円に換金する時点の価値が大きく変動する可能性があります。市場価格をよく見て、ご自身のタイミングで換金する必要があります。価格の安定性を重視する場合は、米ドルなどにペッグされた「ステーブルコイン」で受け取ることを検討するのも一つの方法です。
- 税金: 暗号資産の売却によって利益(受け取った時点の価格よりも売却時の価格が高かった場合など)が出た場合、その利益は原則として所得税の課税対象となり、確定申告が必要になる可能性があります。税金の計算方法や確定申告の手続きは複雑な場合があるため、詳細については税務署や税理士に相談することをお勧めします。
- セキュリティ: 利用する暗号資産取引所やウォレットのセキュリティ対策は非常に重要です。フィッシング詐欺や不正アクセスによる資産の盗難リスクも存在します。信頼できる取引所を選び、二段階認証の設定、パスワードの厳重な管理、不審なメールやリンクに注意するなど、ご自身でもセキュリティ対策を徹底する必要があります。
- 取引所の信頼性: 日本国内で金融庁に登録されている暗号資産交換業者を利用することをお勧めします。未登録業者や海外の取引所を利用する場合、トラブル発生時の対応や法的な保護が十分でない可能性があります。
- 誤送金のリスク: 暗号資産の送金は、アドレスを間違えると資産が消失し、取り戻すことが非常に困難です。取引所への入庫や、他のウォレットへの送金時には、アドレスを正確に入力し、少額でテスト送金を行うなどの対策が有効です。
まとめ
ブロックチェーン国際送金で受け取った暗号資産を日本円に換金するには、暗号資産取引所や販売所を利用するのが一般的です。口座開設、入庫、売却、出金という基本的なステップを踏むことで、比較的スムーズに日本円を手に入れることができます。
換金には、送金手数料、取引手数料、スプレッド、出金手数料といった様々なコストがかかることを理解しておくことが大切です。これらの手数料を含めた実質的なコストを、従来の銀行送金と比較検討することで、ブロックチェーン送金の利便性を最大限に活かすことができるでしょう。
また、換金時の価格変動リスク、税金、セキュリティ、利用する取引所の信頼性、そして誤送金のリスクといった注意点もしっかりと把握し、適切な対策を講じることが重要です。これらの点を理解し、慎重に進めることで、ブロックチェーン送金という新しい方法を安全かつ効果的に活用し、海外からの報酬を日本円として受け取ることが可能になります。
ブロックチェーン送金は、特に手数料面で大きなメリットをもたらす可能性がありますが、換金というプロセスがあることを忘れずに、計画的に利用していきましょう。