ブロックチェーン国際送金はなぜリアルタイムに近い?その仕組みを徹底解説
ブロックチェーン国際送金はなぜリアルタイムに近い?その仕組みを徹底解説
国際送金を利用する際に、多くの方が感じる課題の一つに「時間」があります。銀行を通じた送金では、手続きに時間がかかり、相手の手元に資金が届くまで数日かかることも珍しくありません。特に、海外との取引が多い方にとっては、資金の受け取りや支払いが遅れることは、ビジネスチャンスの損失やキャッシュフローの悪化に直結する可能性があります。
こうした背景から、「ブロックチェーンを使った国際送金は速い」「リアルタイムに近い」といった情報を目にすることが増えているかもしれません。しかし、具体的に「なぜ」速いのか、その仕組みが分からず、本当に信頼できるのか不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、ブロックチェーンによる国際送金が、なぜ銀行送金と比べて圧倒的に速く、まるで国内送金のようにリアルタイムに近い感覚で利用できるのか、その技術的な仕組みを専門用語を避けながら分かりやすく解説します。仕組みを理解することで、ブロックチェーン送金の利便性だけでなく、注意点も把握し、安心して利用するための基礎知識を身につけることができます。
従来の銀行送金はなぜ時間がかかるのか
ブロックチェーン送金の速さを理解するために、まずは従来の銀行送金に時間がかかる理由を見てみましょう。
銀行送金では、送金元から受取人まで、資金が複数の金融機関を経由するのが一般的です。例えば、日本の銀行からアメリカの銀行へ送金する場合、間に複数の「コルレス銀行」と呼ばれる中継銀行が入ることがあります。
このプロセスには、いくつかのステップと関門があります。
- 複数の銀行間での情報のやり取り: 各銀行が送金情報を確認し、次の銀行に引き継ぐプロセスが必要です。これには時間がかかります。
- 営業時間や休日の影響: 各国の銀行の営業時間や休日に左右されます。週末や祝日を挟むと、さらに日数がかかります。
- 手作業やシステム処理の確認: 不正送金やマネーロンダリングを防ぐため、送金内容の確認や承認に時間がかかることがあります。
- 時差の影響: 送金元と受取人の国に時差があると、処理のタイミングがずれることがあります。
これらの要因が積み重なることで、国際送金は完了までに数日から一週間、あるいはそれ以上の時間がかかる場合があるのです。
ブロックチェーン国際送金がリアルタイムに近い理由
一方、ブロックチェーンを使った国際送金がなぜ速いのでしょうか。主な理由は以下の通りです。
1. 仲介機関の削減または不要
ブロックチェーン送金では、従来の銀行送金のように複数の仲介銀行を経由する必要がありません。送金元から受取人へ、ブロックチェーンネットワーク上で直接資金(暗号資産など)を送ることができます。これは、ブロックチェーンが「分散型台帳」と呼ばれる技術によって、特定の管理者を必要とせず、参加者全員で取引情報を共有・記録しているためです。これにより、銀行間の複雑な手続きや確認プロセスが省略され、送金がスムーズに進みます。
2. 24時間365日稼働するネットワーク
ブロックチェーンネットワークは、基本的にインターネットが繋がっていれば24時間365日稼働しています。銀行のように営業時間や休日に左右されることがありません。深夜や週末に送金しても、ネットワークが動いている限り処理が進みます。これにより、送金したいと思った時にいつでも手続きを開始でき、相手もいつでも受け取ることが可能になります。
3. トランザクションの迅速な処理と承認
ブロックチェーン上での送金取引(トランザクション)は、ネットワーク上のコンピューター群(マイナーやバリデーターなどと呼ばれます)によって検証され、一定数の取引が集まった「ブロック」として台帳に追加記録されます。このブロックが台帳に追加される(「承認される」)ことで、取引が確定します。
この検証・承認プロセスは、ブロックチェーンの種類にもよりますが、多くの場合、従来の銀行のバッチ処理や人的確認よりも高速です。例えば、ビットコインでは平均10分程度で新しいブロックが生成されますが、より高速な処理を目指して設計されたブロックチェーン(リップルや特定のステーブルコインなど)では、数秒から数分で取引が承認されるものもあります。
4. 透明性と自動化
ブロックチェーン上の取引履歴は公開されており(個人情報は匿名化されている場合が多いですが)、誰でも確認できます。また、取引の検証や承認のプロセスは、プログラムによって自動的に行われます。これにより、人手を介する確認作業や、それに伴う遅延が大幅に削減されます。
これらの技術的な特性が組み合わさることで、ブロックチェーン国際送金は、銀行送金と比較して格段に速く、体感としてはほぼリアルタイムに近い感覚で利用できるのです。
銀行送金と比較したリアルタイム性の違い
| 項目 | 従来の銀行送金 | ブロックチェーン国際送金 | | :----------- | :----------------------------------------- | :----------------------------------------------- | | 送金にかかる時間 | 数時間〜数日、長ければ一週間以上 | 数秒〜数分(ネットワークやサービスによる) | | 処理体制 | 複数の仲介銀行、営業時間、休日、手作業あり | 分散型ネットワーク、24時間365日稼働、自動処理 | | 追跡 | 銀行システム内での確認が必要 | ブロックチェーンエクスプローラーで公開確認可能 | | 確定性 | 各銀行のシステム処理が完了後 | ブロックが承認され台帳に追加された後 |
このように比較すると、ブロックチェーン送金が時間と手間のかかる中間プロセスを省略し、デジタルデータとして直接かつ迅速に処理される仕組みであることが分かります。
リアルタイム性がもたらすメリット・デメリット
ブロックチェーン国際送金のリアルタイム性には、大きなメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。
メリット
- 資金の迅速な利用: 送金後すぐに相手が資金を使えるため、急ぎの支払いやすぐに事業資金が必要な場合に非常に有利です。
- 機会ロスの削減: 為替レートが良いタイミングを逃さずに送金・着金できる可能性が高まります。
- 心理的な負担軽減: 資金がいつ届くか分からないという不安や、送金完了までの待ち時間が大幅に短縮されます。
デメリット・注意点
- 価格変動リスク: 送金に利用する暗号資産の価格が、送金中や着金するまでの短い時間でも大きく変動する可能性があります。リアルタイムで送金できても、受け取った暗号資産の価値が変動していることは十分に考えられます。
- ネットワーク混雑時の遅延: 特定のブロックチェーンネットワークが混雑している場合、送金承認に時間がかかったり、手数料(ガス代)が高騰したりすることがあります。
- 不可逆性: 一度ブロックチェーン上で承認された取引は、基本的に取り消すことができません。これは「速さ」の裏返しでもあり、送金先アドレスの入力ミスなどは致命的な問題となります。
リアルタイム性を最大限に活かすための注意点
ブロックチェーン送金のリアルタイムなメリットを享受しつつ、リスクを最小限に抑えるためには、以下の点に注意が必要です。
- 利用するブロックチェーンやサービスの選定: 処理速度はブロックチェーンの種類や利用するサービスによって異なります。送金速度を重視する場合は、高速な処理が可能なネットワークやサービスを選ぶことが重要です。ただし、速度だけでなく、手数料やセキュリティも考慮して総合的に判断する必要があります。
- ネットワーク状況の確認: 利用するブロックチェーンのネットワークが混雑していないか、事前に確認できるサービスや情報を活用しましょう。混雑時はガス代が高騰し、承認に時間がかかることがあります。
- 送金情報の二重三重チェック: 特に送金先のアドレス(ウォレットアドレスなど)は、間違えると資金を失う可能性があります。少額でテスト送金を行うなど、慎重に確認する習慣をつけましょう。
まとめ
ブロックチェーンを使った国際送金が、従来の銀行送金と比べて圧倒的に速く、リアルタイムに近い感覚で利用できるのは、仲介機関が少なく(あるいは不要で)、24時間365日稼働するネットワーク上で、取引がプログラムによって迅速かつ自動的に処理・承認される技術的な仕組みによるものです。
このリアルタイム性は、資金をすぐに使いたい、送金完了までの待ち時間を減らしたい、といったニーズに応える大きなメリットとなります。しかし、その速さゆえに、暗号資産の価格変動リスクや、誤送金の取り消しが難しいといった注意点も伴います。
ブロックチェーン国際送金のリアルタイムな利便性を最大限に活かすためには、仕組みを理解し、利用するサービスやネットワークを選び、送金情報を正確に入力するなど、利用者が注意を払うことが不可欠です。これらの点を踏まえ、ご自身のニーズに合った賢い国際送金方法を選んでいきましょう。