ブロックチェーン国際送金、ネットワークの混雑が送金にどう影響する?リスクと対策
ブロックチェーン国際送金の隠れた課題?ネットワークの状態が送金に与える影響とは
ブロックチェーン技術を活用した国際送金は、従来の銀行送金と比較して「速い」「手数料が安い」といったメリットが注目されています。しかし、時として送金が遅れたり、予期せぬ高い手数料がかかったりすることがあります。「なぜ、速いはずなのに遅れるの?」「安いと思っていたのに高くなったのはなぜ?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
その理由の一つに、「ブロックチェーンネットワークの混雑」があります。ブロックチェーンは世界中で多くの人が利用する分散型のシステムです。インターネット回線が混み合うように、ブロックチェーンネットワークも利用者が集中すると混雑することがあります。
この記事では、このブロックチェーンネットワークの混雑が国際送金にどう影響するのか、具体的なリスクと、私たちが取るべき対策について分かりやすく解説します。
なぜブロックチェーンネットワークは混雑するのか?
ブロックチェーンの取引(トランザクション)は、ブロックに記録され、ネットワーク上の参加者(ノード)によって承認されることで完了します。しかし、ブロックに記録できるトランザクションの量には限りがあり、また、新しいブロックが生成されるスピードもブロックチェーンの種類によって決まっています。
ネットワークが混雑する主な理由は以下の通りです。
- 利用者の集中: 特定の暗号資産(仮想通貨)が人気になったり、大きなニュースがあったりすると、取引が急増します。
- 大規模な取引: 一度に大量のトランザクションが発生するようなイベントがある場合。
- ネットワーク設計上の限界: ブロックサイズやブロック生成速度など、プロトコル自体の設計によって、処理能力に上限があるため。
このような状況下では、処理能力に対して処理したいトランザクションが多すぎる状態となり、渋滞が発生します。
ネットワーク混雑が国際送金に与える具体的な影響
ネットワークが混雑すると、国際送金においても以下のような具体的な影響が出ることがあります。
1. 送金速度の低下(遅延)
ブロックチェーンでは、自分の送金取引が新しいブロックに取り込まれ、一定回数承認されることで完了します。しかし、ネットワークが混雑していると、多くの取引がブロックへの記録を待っている状態になります。この待機列が長くなるため、自分の取引がブロックに取り込まれるまでに時間がかかり、結果として送金完了までの時間が長くなってしまいます。
通常数分から数十分で完了するはずの送金が、数時間、場合によってはそれ以上かかることも稀にあります。
2. 送金手数料(ガス代)の高騰
多くのブロックチェーンでは、取引をブロックに優先的に含めてもらうために「送金手数料(ガス代などと呼ばれる)」を支払います。この手数料は、ネットワークの混雑状況によって変動するのが一般的です。
混雑時、ブロックに限りがある中で自分の取引を早く処理してもらいたい利用者が、より高い手数料を提示します。その結果、手数料の価格競争が起こり、全体的に手数料が高騰します。
国際送金サービスによっては、この変動する手数料をサービス側が負担して固定料金としている場合もあれば、利用者が負担する場合もあります。利用者が負担する場合、想定していた手数料よりも大幅に高くなってしまう可能性があります。例えば、通常数百円程度で済むはずの手数料が、数千円、場合によってはそれ以上になることもあり得ます。
ネットワーク混雑のリスクに対する対策
では、ブロックチェーンネットワークの混雑によるリスクを避けるために、私たちはどのような対策を取れば良いのでしょうか。
1. ネットワークの混雑状況を確認する
主要なブロックチェーン(特に国際送金によく利用される暗号資産のブロックチェーン)については、現在のネットワークの混雑状況や平均的な手数料を確認できるサイト(ブロックエクスプローラーなど)が存在します。
例えば、特定のブロックチェーンの名前と「Gas Fee」「Network Status」といったキーワードで検索すると、現在の推奨手数料や待機中のトランザクション数などを確認できるサイトが見つかります。これらの情報を参考に、送金を行うタイミングを判断することができます。ただし、これらの情報は専門的な内容を含むこともあるため、完全に理解するのは難しいかもしれません。まずは「今、手数料が高騰していないか」「異常に多くの取引が待機していないか」といった大まかな状況を見るだけでも参考になります。
2. 送金手数料(ガス代)の設定を理解する
利用する国際送金サービスが、利用者に送金手数料を負担させる方式の場合、手数料を自分で設定できることがあります。手数料を高く設定すれば早く処理される可能性が高まりますが、コストが増えます。逆に低く設定すると、いつまでも処理されない(保留される)可能性があります。
サービス側が推奨する手数料を確認するか、サービスによっては手数料を固定しているかを確認しましょう。自分で設定する場合は、ネットワークの混雑状況を見ながら適切なレベルを判断する必要があります。
3. 混雑しにくい時間帯を狙う(一般的な傾向)
絶対ではありませんが、世界的に利用者が多い時間帯(例えば、欧米の取引が活発な時間帯など)は混雑しやすい傾向があります。逆に、そうではない時間帯を狙うことで、比較的スムーズに、低い手数料で送金できる可能性があります。ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、予測は困難な場合が多いです。
4. 利用する暗号資産やサービスを検討する
ブロックチェーンの種類によって、その処理能力や混雑のしやすさは異なります。例えば、ビットコインやイーサリアムは利用者が多いため混雑しやすい傾向がありますが、他の比較的新しいブロックチェーンや、送金に特化した設計のブロックチェーンは、より高速で低コストな場合があります。
また、国際送金サービスの中には、複数のブロックチェーンや技術を組み合わせて、利用者に混雑の影響が出にくいように工夫しているところもあります。信頼できるサービスを選ぶことが重要です。
5. もし遅延や高騰が起きた場合の対処法を知っておく
万が一、送金が想定より大幅に遅れたり、予期せぬ高額な手数料が発生したりした場合は、まず利用している国際送金サービスのサポートに問い合わせるのが最も確実な方法です。現在の送金状況を確認してもらい、必要な対応についてアドバイスを受けることができます。
自分でブロックチェーンエクスプローラーを使って状況を確認することも可能ですが、取引IDなどの情報が必要であり、読み解くにはある程度の知識が求められます。
まとめ:ネットワークの状態も考慮して賢く利用する
ブロックチェーン国際送金は、手数料の安さや送金速度など、多くの魅力を持っています。しかし、その基盤となるブロックチェーンネットワークは、インターネットと同様に混雑することがあり、それが送金に影響を与える可能性があることを理解しておくことが重要です。
ネットワークの混雑は常に起こるわけではありませんが、特に利用者が急増する時期などには注意が必要です。利用前にネットワークの状況を軽く確認する習慣をつけたり、信頼できる国際送金サービスを選んだりすることで、これらのリスクを軽減し、よりスムーズで計画的な国際送金を実現できるでしょう。
ブロックチェーンの仕組みを少し知ることで、メリットを最大限に活かしつつ、万が一のトラブルにも冷静に対応できるようになります。