【国際送金】銀行・Wiseからブロックチェーンへ!失敗しない「乗り換え」の始め方
はじめに:国際送金に不満?ブロックチェーンへの乗り換えを考えるあなたへ
海外との取引や家族への送金などで国際送金を利用する際、高額な手数料や両替レートのロス、あるいは送金の遅延といった課題に直面することは少なくありません。特にフリーランスとして海外から報酬を受け取る機会が多い方にとっては、これらのコストや不便さが収益に直接影響するため、より深刻な問題かもしれません。
近年、こうした国際送金の課題を解決する新たな手段として、ブロックチェーン技術を活用した送金方法が注目されています。銀行やWise(旧TransferWise)のような既存のサービスに代わる選択肢として、ブロックチェーン送金への「乗り換え」や「使い分け」を検討し始めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、「本当に安全なの?」「手続きは難しくないの?」「これまでのサービスと何が違うの?」といった疑問や不安から、なかなか一歩を踏み出せないという声も聞かれます。
この記事では、現在銀行やWiseなどのサービスを利用していて、ブロックチェーン送金に興味を持っている方を対象に、乗り換えを検討する際の判断基準、具体的な始め方、そして知っておくべき注意点やリスク回避策について、分かりやすく解説します。ご自身の国際送金に最適な方法を見つけるための一助となれば幸いです。
国際送金の方法を見直すきっかけは?
私たちが国際送金の方法を見直そうと思うきっかけは、主に以下のような点にあることが多いでしょう。
- 高額な手数料: 送金手数料だけでなく、中継銀行手数料や受取手数料など、見えにくいコストが多く、合計すると予想以上の金額になることがあります。
- 不利な為替レート: 銀行などが提示する為替レートには、多くの場合スプレッド(手数料に相当する上乗せ分)が含まれており、市場レートよりも不利なレートで両替されることで実質的なコストが増加します。
- 送金の遅延: 送金に数日かかることがあり、急ぎの場合や頻繁に送金する必要がある場合に不便を感じることがあります。
- 手続きの煩雑さ: 特に初めての送金や高額な送金の場合、多くの書類が必要になったり、手続きに手間取ったりすることがあります。
- 24時間対応ではない: 銀行の窓口やオンラインバンキングのシステムは、利用できる時間帯が限られていることがあります。
こうした既存の方法に対する不満から、「もっと安く、速く、簡単に送金できる方法はないか」と新しい選択肢を探し始めることになります。その中で、ブロックチェーン送金が候補に挙がってくるのは自然な流れと言えるでしょう。
ブロックチェーン送金への「乗り換え」は正しい選択か?判断基準
ブロックチェーン送金があなたの国際送金ニーズに合っているかどうかを判断するためには、その主な特徴を理解し、ご自身の状況と比較検討することが重要です。
ブロックチェーン送金が向いている可能性が高い方
- 手数料や為替ロスを極力抑えたい方: ブロックチェーン送金は、仲介業者を介さないため、既存の金融機関よりも手数料が安くなる傾向があります。特に頻繁に少額を送金する場合や、特定の通貨ペアでの送金においてメリットが大きい場合があります。
- 送金速度を重視する方: ブロックチェーンの仕組み上、承認が比較的速く行われるため、24時間365日、リアルタイムに近い速度での送金が期待できます(ただし、ネットワークの混雑状況や利用するサービスによって変動します)。
- 土日や深夜でも送金したい方: ブロックチェーンネットワークは常に稼働しているため、時間や曜日を気にせずいつでも送金できます。
- 新しい技術やサービスに抵抗がない方: ある程度の学習コストや、自己責任で資産を管理する必要があることを理解し、前向きに取り組める方に向いています。
ブロックチェーン送金が向いていない可能性が高い方
- 暗号資産の価格変動リスクを避けたい方: ブロックチェーン送金では、法定通貨を暗号資産に交換し、送金後再び法定通貨に戻すプロセスが伴う場合があります。この過程で暗号資産の価格が変動するリスクがあり、為替変動リスクに加えて注意が必要です(ただし、価格が安定したステーブルコインを利用することで、このリスクを軽減できます)。
- 手続きのすべてを誰かに任せたい方: ブロックチェーン送金では、ウォレットの管理やアドレスの正確な入力など、一定の自己責任が伴います。銀行のように手厚いサポートを期待する方には不向きかもしれません(ただし、近年はサポート体制を強化しているサービスもあります)。
- 技術的なことに全く関心がない方: ブロックチェーンや暗号資産に関する基本的な知識なしに利用すると、予期せぬトラブルやリスクに遭遇する可能性があります。
- 特定の国や通貨への送金: まだブロックチェーン送金が広く普及していない国や、利用したい暗号資産の流動性が低い通貨への送金には向かない場合があります。
ご自身の送金頻度、1回あたりの送金額、送金先の国や通貨、そしてご自身の技術への理解度やリスク許容度を考慮して、ブロックチェーン送金が本当に最適な選択肢なのかを慎重に判断しましょう。
銀行・Wiseからブロックチェーン送金へ!具体的な乗り換えステップ
ブロックチェーン送金への乗り換えを決めたら、以下のステップで進めることができます。
ステップ1:情報収集とサービス選定
まず、どのようなブロックチェーン送金サービスがあるのか情報を集めましょう。日本国内で利用できる暗号資産取引所や、国際送金に特化したブロックチェーンベースのサービスなどがあります。サービスによって扱っている暗号資産の種類、手数料体系、利用可能な国、サポート体制などが異なります。
サービス選定の際は、以下の点をチェックすると良いでしょう。
- 信頼性・安全性: 金融庁への登録があるか、過去の事故やセキュリティ対策は十分か。
- 手数料: 送金手数料、両替手数料、ネットワーク手数料(ガス代)などが明確か、合計コストはどの程度か。
- 扱っている暗号資産: 国際送金に使いやすい暗号資産(特にステーブルコイン)を扱っているか。
- 操作性: アプリやウェブサイトのインターフェースは分かりやすいか。
- サポート体制: 日本語でのサポートは利用できるか、困ったときに問い合わせしやすいか。
複数のサービスを比較検討し、ご自身のニーズに最も合ったものを選びましょう。
ステップ2:暗号資産取引所/サービスの口座開設・本人確認(KYC/AML)
利用したいサービスが決まったら、口座開設手続きを行います。これは銀行口座を開設するのと同様に、本人確認(KYC: Know Your Customer)や反社会的勢力でないことの確認(AML: Anti-Money Laundering)が法律で義務付けられています。
本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)の提出や顔写真の撮影などが必要になり、審査に数日かかる場合があります。これは、ブロックチェーン送金が匿名でテロ資金供与などに利用されることを防ぐために重要なプロセスです。
ステップ3:日本円を入金し、送金に使う暗号資産を用意する
口座開設が完了したら、国際送金に使うための資金を準備します。まず、選んだサービスに日本円を入金します。入金方法は銀行振込などが一般的です。
次に、入金した日本円を使って、送金したい通貨に対応する暗号資産(多くの場合、特定の法定通貨と価格が連動するステーブルコインや、主要な暗号資産であるビットコインやイーサリアムなど)を購入します。例えば、米ドル建てで送金したい場合は、USDTやUSDCといった米ドルペッグのステーブルコインを購入することを検討すると良いでしょう。
ステップ4:実際に送金してみる
暗号資産の準備ができたら、いよいよ送金です。
- 送金先のアドレス(ウォレットアドレスまたは取引所のアドレス)を確認します。このアドレスを間違えると、基本的に資金は戻ってきません。 必ず複数回確認しましょう。可能であれば、少額でテスト送金を行うことを強く推奨します。
- 送金したい暗号資産の種類と数量、送金先アドレスを入力します。
- ネットワーク手数料(ガス代)を確認します。これはブロックチェーンネットワーク上で取引を処理するための費用で、ネットワークの混雑状況によって変動します。
- 内容を最終確認し、送金を実行します。
送金処理がネットワークに承認されると、送金が完了します。多くのサービスでは、送金履歴をオンラインで確認できます。
ステep5:受け取り側の準備
受け取り側も、ブロックチェーン送金を受け取るための準備が必要です。
- 受け取り側も、対応する暗号資産ウォレットを持っているか、あるいは暗号資産の受け取りが可能な取引所の口座を持っている必要があります。
- 送金に使う暗号資産の種類(例: USDT)と、どのネットワーク(例: ERC-20, TRC-20)を使うかを、送金前に受け取り側と正確に共有する必要があります。
- 受け取り側は、自身のウォレットアドレスまたは取引所の入金アドレスを送金側に伝える必要があります。
ステップ6:確認と記録
送金が完了したら、送金履歴を必ず確認し、記録を残しておきましょう。これは、万が一トラブルが発生した場合の確認だけでなく、税金計算(確定申告)の際にも非常に重要になります。多くのサービスでは、送金日時、送金した暗号資産の種類と数量、その時のレート、手数料などが記録された明細を確認できます。
乗り換え前に知っておくべき重要な注意点とリスク回避
ブロックチェーン送金は多くのメリットがありますが、既存の送金方法とは異なるリスクや注意点が存在します。これらを十分に理解し、対策を講じることが、失敗しない「乗り換え」には不可欠です。
- 暗号資産の価格変動リスク: 特にビットコインやイーサリアムのような価格変動が大きい暗号資産を使う場合、送金中に価格が大きく変動し、受け取り側が受け取る法定通貨額が変動する可能性があります。価格変動リスクを避けたい場合は、特定の法定通貨に連動することを目指して設計されたステーブルコイン(例: USDT, USDC, JPYCなど)を利用することを強く推奨します。
- 誤送金のリスク(不可逆性): ブロックチェーン上の取引は、一度実行され承認されると基本的に取り消すことができません。送金先アドレスを間違えた場合、資金を失う可能性が非常に高いです。送金前にはアドレスを複数回確認し、可能であれば少額でのテスト送金を行いましょう。
- セキュリティ対策: ご自身の口座やウォレットのセキュリティは、自己責任で管理する必要があります。二段階認証の設定、強力なパスワードの使用、不審なメールやサイトへの注意など、基本的なセキュリティ対策を徹底してください。利用する取引所やウォレットのセキュリティ対策も事前に確認しましょう。
- 税金に関する知識: 暗号資産の取引や利用には税金が発生する可能性があります。日本円での購入、他の暗号資産との交換、法定通貨への換金、商品やサービスの支払いなどに課税される場合があります。確定申告が必要になるケースもあるため、税金に関する基礎知識を身につけ、必要に応じて税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
- 法規制やサービスの変更リスク: 暗号資産やブロックチェーンに関する法規制は変化する可能性があり、利用しているサービスの規約や提供内容が変更されることもあります。常に最新の情報を確認するようにしましょう。
- ネットワーク手数料(ガス代)の変動: ブロックチェーンネットワークの混雑状況によって、取引手数料(ガス代)が大きく変動することがあります。手数料が高い時は送金を控えるなど、タイミングを考慮することも有効です。
これらのリスクを理解し、適切な対策を講じることで、ブロックチェーン送金をより安全に利用することができます。
まとめ:賢くブロックチェーン送金を利用するために
銀行やWiseなどの既存の国際送金サービスからブロックチェーン送金への「乗り換え」は、手数料の削減や送金速度の向上といった多くのメリットをもたらす可能性があります。特に国際的な取引が多い方にとっては、無視できない選択肢となるでしょう。
しかし、ブロックチェーン送金には暗号資産の価格変動リスクや誤送金の不可逆性、自己責任によるウォレット管理など、既存の方法とは異なる注意点やリスクが存在します。これらのリスクを理解せずに安易に乗り換えると、思わぬトラブルに見舞われる可能性もあります。
失敗しない乗り換えの第一歩は、まずはしっかりと情報収集を行い、ご自身の国際送金ニーズとブロックチェーン送金の特徴を比較検討することです。そして、信頼できるサービスを選び、少額からテスト送金を試してみることをおすすめします。
すべての国際送金をブロックチェーンに切り替える必要はありません。送金頻度や金額、送金先、あるいは目的によって、ブロックチェーン送金と既存のサービスを賢く使い分けることも有効な戦略です。
「ブロックチェーン送金Lab」では、ブロックチェーン技術を活用した国際送金に関する様々な情報を発信しています。この記事で触れた各論点(手数料、速度、安全性、ウォレット、税金など)についても、さらに詳しい解説記事がありますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。