【国際送金】ブロックチェーンを使うべきか迷ったら?不向きなケースとその対策
はじめに:ブロックチェーン国際送金、本当にあなたに合っていますか?
近年、国際送金の新しい選択肢としてブロックチェーン技術に注目が集まっています。銀行を使った従来の国際送金に比べて、手数料が安く、送金速度が速い可能性があるといったメリットがしばしば語られます。
しかし、どんな技術やサービスにも言えることですが、ブロックチェーンを使った国際送金がすべての状況で最適解となるわけではありません。あなたの状況や送金相手によっては、かえって手続きが複雑になったり、予期せぬリスクに直面したりする可能性もあります。
この記事では、ブロックチェーンを使った国際送金が「不向きかもしれない」と考えられる具体的なケースに焦点を当てて解説します。ご自身の国際送金の目的や状況と照らし合わせながら、ブロックチェーン送金が本当にあなたにとって最良の選択肢なのかを見極めるための参考にしていただければ幸いです。
ブロックチェーン国際送金が不向きかもしれない主なケース
ブロックチェーンを使った国際送金は、多くのメリットがある一方で、特定の状況下では最適な方法とは言えない場合があります。ここでは、具体的にどのようなケースで不向きになりうるのか、その理由と代替手段について見ていきましょう。
ケース1:送金相手が暗号資産やウォレットの扱いに不慣れな場合
- 理由: ブロックチェーン送金で受け取った暗号資産を利用するためには、受け取り側が暗号資産を管理するための「ウォレット」を持っていたり、取引所の口座を持っていたりする必要があります。これらの設定や操作に慣れていない相手にとっては、大きな負担や混乱の原因となる可能性があります。また、ウォレットの秘密鍵管理など、暗号資産特有の知識も必要となります。
- 対策: 送金相手のITリテラシーや暗号資産への理解度を確認することが重要です。もし相手が不慣れであれば、無理にブロックチェーン送金を勧めず、従来からの銀行送金や、Wise(旧TransferWise)などの比較的安価な海外送金サービス、場合によってはWestern Unionなどの現金送金サービスなど、相手が使い慣れた、あるいはより容易に利用できる手段を検討する方がスムーズでしょう。
ケース2:送金金額が非常に少額の場合
- 理由: ブロックチェーン上での取引には「ガス代」と呼ばれるネットワーク手数料がかかる場合があります。このガス代は、送金する金額によらず一定、または取引内容によって変動しますが、送金額に対してガス代の占める割合が非常に高くなることがあります。例えば、数百円程度の少額を送金する場合、ガス代が送金額を上回ってしまう可能性もゼロではありません。
- 対策: ブロックチェーンの種類や送金サービスによって手数料体系は異なりますので、少額送金に特化したサービスがないか確認することも一つの方法です。しかし一般的には、非常に少額の送金であれば、PayPalなどのオンライン決済サービスや、少額送金に強いとされる他のサービス(国や地域による)の方が、手数料の面で有利な場合があります。ある程度まとまった金額をまとめて送金することで、手数料の割合を相対的に下げることができます。
ケース3:即時・リアルタイムでの着金が絶対に必須な場合
- 理由: ブロックチェーン送金は「ほぼリアルタイム」と言われることが多いですが、実際にはネットワークの混雑状況や、取引を承認する時間(ブロック生成時間)、そして利用する送金サービス側の内部処理時間などが影響し、必ずしも文字通り数秒で相手のウォレットに反映されるわけではありません。特に、取引量が多い時期や、承認に時間がかかるブロックチェーンを利用する場合は、着金までに時間がかかることもあります。
- 対策: 時間に余裕を持って送金手続きを行うことが基本です。もし、どうしても数分以内のリアルタイム着金が必須であれば、ブロックチェーン送金はリスクが高いかもしれません。この場合、銀行間の即時送金システム(国内に限られることが多いですが)や、一部の国際送金サービスが提供するリアルタイム送金オプション(利用できる国や通貨に制限がある場合があります)の方が確実性が高いでしょう。
ケース4:為替変動リスクを完全に避けたい場合
- 理由: 多くのブロックチェーン送金では、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)といった価格変動の大きい暗号資産を利用します。送金指示を出してから相手が受け取るまでの間に、暗号資産の市場価格が大きく変動し、結果として受け取り金額が想定よりも少なくなってしまう「為替変動リスク」ならぬ「暗号資産価格変動リスク」が存在します。
- 対策: 価格変動リスクを最小限に抑えたい場合は、「ステーブルコイン」を使った送金を検討することができます。ステーブルコインは米ドルなどの法定通貨に価格が連動するように設計されており、価格変動が比較的少ないという特徴があります。ただし、ステーブルコインを利用できるサービスが限られたり、ステーブルコイン自体にも価格ペッグが外れるリスク(頻度は低いですが)がないわけではありません。完全にリスクを排除したいのであれば、銀行送金やWiseなど、法定通貨建てで送金を行うサービスを利用する方が確実です。
ケース5:技術的な操作ミスに強い不安があり、資産消失が心配な場合
- 理由: ブロックチェーン送金は、一度取引が実行されると基本的に取り消しができません。送金先のアドレスを間違えたり、ネットワークの種類を間違えたりした場合、送金した資産は永久に失われてしまう可能性があります。銀行送金のように、組戻し手続きを行うことは原則として不可能です。
- 対策: 操作ミスを防ぐためには、送金前に送金先アドレスや送金ネットワークなどを複数回確認することが非常に重要です。少額でテスト送金を行うのも有効な手段です。もし、これらの技術的な操作自体に強い不安を感じる場合は、カスタマーサポートが充実している送金サービスを選ぶか、操作ミスによる資産消失リスクがない法定通貨建ての送金サービスを利用する方が安心かもしれません。
では、どんな時にブロックチェーン送金が向いているのか?(再確認)
ここまでブロックチェーン送金が不向きなケースを見てきましたが、もちろんブロックチェーン送金が非常に有効な状況も多くあります。
- 手数料を安く抑えたい場合: 特に高額な国際送金において、銀行送金と比較して圧倒的に手数料を抑えられる可能性があります。
- 送金速度を重視したい場合: 銀行の営業時間外や週末などでも関係なく、比較的迅速に送金処理を進められます。
- 送金相手もブロックチェーンや暗号資産に慣れている場合: お互いにウォレットの準備などが容易であれば、スムーズに利用できます。
- 送金する国・地域によっては、銀行送金が困難または非常に高額な場合: 途上国への送金などで、ブロックチェーン送金が唯一の現実的な選択肢となるケースもあります。
まとめ:賢く国際送金手段を選びましょう
ブロックチェーンを使った国際送金は、間違いなく国際送金の未来を変える可能性を秘めた技術です。しかし、万能ではありません。
この記事でご紹介したように、送金相手の状況、送金額、送金の緊急度、為替(価格)変動リスクの許容度、ご自身の技術的な習熟度など、様々な要因によって最適な送金方法は異なります。
国際送金を行う際は、一つの方法に固執せず、ご自身の状況や送金相手にとって最もメリットがあり、かつリスクを抑えられる手段は何かを総合的に判断することが重要です。ブロックチェーン送金も、数ある国際送金手段の一つとしてその特性を理解し、賢く使い分けていくことをお勧めします。
ご自身の状況に合わせて、最適な国際送金の方法を見つけてください。